FRONTIER SPIRITS

開拓スピリッツ

挑戦はマツオカのDNA

わたしたちの歴史は、日本の服づくりと共に歩んできた挑戦の歴史です。
マツオカがはじめて海外に生産を委託したのは、1982年のことでした。当時の韓国では、工場に数千人もの工員さんが整然と並んで座り、忙しくミシンを踏んでいました。しかし、ものづくりに従事する人材は景気が良くなると少なくなってしまうものです。それは、次の生産拠点となった中国でも同様です。こうしてわたしたちは、ものづくりの新天地、可能性のある場所を探し求めていきました。それが、現在の中国、ミャンマー、バングラデシュ、ベトナム、インドネシアの5か国で12の自社工場を運営する規模になったのです。

右も左も分からない、言葉さえ通じない場所でゼロから工場を立ち上げることは、想像を超える苦労や困難の連続です。なかには失敗もありました。それでもやり遂げるまで諦めなかったからこそ、マツオカの技術やノウハウが生まれ、現地に根づき、人材を育てることに繋がったと思っています。日本を離れ、さまざまな国でものづくりをするには、多くの人との関わりあいが大切です。国境を超えたつながりは、これからのものづくりにおいてますます重要になっていくことでしょう。なにより、現地で雇用を生み、経済を動かし、暮らしを支えることで得られる信頼は、将来にわたって大きな財産になっていくはずです。うまくいっている時にこそ、その場に安住せず新しい場所を探し求め、挑戦する。その気持ちが、どんな時代でもわたしたちのミッションを支えています。

仕事をつくるということは、
景色をつくるということ

わたしたちが新しい土地に工場を建てようとするときのことをご紹介します。最初に考えるのは「1工場で最低1千人以上の工員さんが集められるか」ということです。工場の規模の単位は「週1回、約20,000枚、40フィートコンテナ1本の製品が出荷できる」という想定です。

2014年10月にベトナム北部で工場用地を初めて探しに行った時のことです。この時は、3日をかけて、600キロほどの道をワゴン車で走りました。まずハノイに入って、ジェトロで情報を収集します。その後150キロほど車で南へ下って、地元の政府関係者や工業団地の投資誘致担当者と会い、ヒアリングや意見交換をじっくり行います。そして、紹介された候補地を何カ所も実地調査します。その時は、候補地を何カ所見ても、なかなか「ここ」という場所に出会えず、夜な夜なローカルフードをお酒で流し込みながら、同行する数名のスタッフとああでもないこうでもないと語り明かしました。

最終日、やや気落ちしながら車でハノイへ戻る車中、旅の最初にジェトロの所長に聞いた「北西部の地域も、今はまだ注目されていませんが、将来を考えると可能性ありますよ」という言葉を思い出します。そこでハノイから100キロほど北西に上ったフート省を急きょ訪問することにしました。工場用地を管理する会社の副社長に連絡して、「これから行きますので」と現地案内を依頼しました。まだ水牛が闊歩しているような荒れ地で、周囲には住宅地も工場も商店街もなく、道路もまだ舗装されていない、砂ぼこりの立つガタガタ道です。皆さんきっと「こんな未開の地で、工場はありえないでしょう」と思うような場所です。

しかし、その副社長の話を聞きながら周りの景色を見て、私は「ピン」ときました。数年後には、高速道路が近くまで来るとの情報も頭の隅にありました。現地調査の後、日本に戻ってすぐに資料をまとめ、投資を決めました。ハノイに新会社を設立登記し、日本からスタッフを送り込み、工場の立ち上げ準備に入りました。2016年9月に開所式を行って、現在は約60,000平方メートルの土地に、2,000人を超える従業員が元気に働いています。立ち上げ当時は当社の工場しかありませんでしたが、今ではすっかり大規模な工業団地になりました。予定通り高速道路が整備されて空港からの移動も便利になり、車と人が活発に往来し、道路脇には商店が並ぶなど、地域住民の生活も、広がる景色も見違えるようになりました。

これからの時代に求められる開拓者

これからの時代は、新しい生産拠点だけが開発や挑戦の対象ではありません。地球規模で自然環境に配慮した生産体制を築くことはもちろん、国ごとに異なる文化や地域性を考慮しながら、長く、快適で安心して働ける労働環境や福利厚生を整えることも大切です。日本のものづくり精神を理解してもらいながら、現地との間に架け橋を築くこと。地域の生活と文化の向上を目指し、そこで働く人々も幸せになってもらうこと。こうした姿勢が大切になってくると思います。

さらに、現在のマーケットは主に日本のお客さまがメインですが、世界で困っているところはないのか。いまは洋服をつくることがメインだけれど、ものづくりにおける海外の拠点開発で困っているところは他にもあるのではないか。自分たちの強みを活かしながら、さまざまな角度で市場を開拓していく。世界中に広がるサプライチェーンを活用してもらえる未来は、まだまだ可能性に満ちていると思います。